唯川恵の『瑠璃でもなく、玻璃でもなく』を読んだ

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先日、近所のブックオフで20%OFFセールをしていた。

普通なら108円コーナーは対象外になっていそうなものだが、108円のコーナーにあった唯川恵の『瑠璃でもなく、玻璃でもなく』も20%OFFだった。

 

瑠璃でもなく、玻璃でもなく (集英社文庫)

瑠璃でもなく、玻璃でもなく (集英社文庫)

 

 

この作品は、会社の先輩と不倫する26歳の女性と、その会社の先輩の奥さんの34歳の女性の話。

 

唯川恵は割と好きなのですが、彼女の好きなところはどこかと聞かれれば、常にセックスが素直に正当化されるところかもしれない。

表立って話をするには難しく、また場合によっては汚らわしいものとして扱われることさえある性行為が、彼女の作品の中では常に何にも代えがたい素敵で満たされる行為として描写される。

それが浮気や不倫であっても正当化されるし、20代のOLがいつの間にか15歳の男子高校生との間で妊娠していてもそれが正当化される(これは他の作品の話。幸せの結末として描かれている)。

 

それはさておき。

この作品では不倫相手との将来に不安を抱える26歳の女性と、結婚に憧れて結婚するも不満を抱える34歳の女性が描かれている。

「恋愛は不安との戦いであり、結婚は不満との戦いである。」

 

今の時代、結婚して家庭に入ることこそが「女の幸せ」とでも言おうものなら非難轟々だ。

もはや結婚は決して人生のゴールではなく、人生の通過点の一つに過ぎない。

結婚してからも自分の人生は自分の人生だ。 

自分の人生は自分で幸せなものにしていかなければならない。

ただ、その「幸せ」は人によって違う。育児や家事をして円満な家庭を築くのが「幸せ」だと感じる人もいれば、結婚せずにキャリアを追求して仕事を頑張ることを「幸せ」だと感じる人もいる。

自分の「幸せ」が他の人にとっても「幸せ」かどうかはわからない。他の人の「幸せ」が自分にとっても「幸せ」かどうかもわからない。

幸せそうな人を羨んだりするのではなく、自分にとっての「幸せ」を追求していくべきである。

 「私もね、いろいろ考えたの。専業主婦も快適だったし、このままでもいいかなぁって。でも、子供はいつか巣立っていくじゃない。子育てしかしなかったら、逆に私が子離れできないかもしれない。そりゃあ子供は可愛いわ。毎朝、保育園に預ける時は、拓斗より私の方が泣きたいくらい。でもね、やっぱり私は、私の人生を大切にしようと思うの。だって夫婦も親子も、所詮は別の人間なんだもの。もちろん、いい意味で言ってるのよ」

 

「わかっている。専業主婦が悪いわけじゃない。働きたい人はそうすればいいし、子育てに没頭したいならそうすればいい。家事だって大切な仕事だ。人それぞれ。人生はみんな違って当たり前なのだ。」

 

 

物語のあらすじに踏み込んでしまうから書かないが、物語の最後で揺り動く主人公の心情はとても人間らしかった。

 

読んでいて続きがどんどん気になる小説だったけども、人に勧めるほどのものかと言われると、腑に落ちないところも多々あるし、なんかちょっと違うかな、と思った。

また、あらためて女性作家の恋愛作品は自分には全然理解出来ていないのではないかと思わされた。

 

瑠璃でもなく、玻璃でもなく (集英社文庫)

瑠璃でもなく、玻璃でもなく (集英社文庫)